廿TT

譬如水怙牛過窓櫺 頭角四蹄都過了 因甚麼尾巴過不得

onnen の 1st アルバム "No More Void 4 Lonely” がよかった

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onnen は日本のラッパー。

彼の 1st アルバム "No More Void 4 Lonely” のプロデューサー、粗悪ビーツはGRIME や ROAD RAP、LEX LUGER のビートを聴いたことをきっかけにトラックを作り始めたという。(ときチェケ♪

GRIMEやROAD RAP、LEX LUGERのビート」というのは90年代黄金期のサンプリングを主体としたヒップホップとはまったく異なる、シンセサイザーやチキチキしたドラムを強調した大げさなくらい暗くて荒々しいサウンドを特徴とする。

これらは自分から「遠い」音楽だった。

黒人の怖そうな人たち、悪そうな人たちが銃や麻薬の話をしてる。

聞いてる間だけはワルになった気分、強くなった気分、一人になれる、そういう音楽だった。

だからぼくはなかよし感のあるヒップホップコミュニティにはついていけなかった。

ホーミー(友達)いっぱいいんじゃんお前ら。たぶんお金ももってる。女にももてる。なにに対して怒ってんだ?

一方、onnen の "No More Void 4 Lonely” はショッキングだった。

あまりに自分に近すぎるのだ。

アルバムはこんな言葉から始まる。

別にいいよクラブで、かからなくても
ベースがどうとか、ドラムがどうとか
そんなの二の次興味が無い
別にいいよクラブで、かからなくても
フローがどうとか、スキルがどうとか
そんなの二の次、興味が無い
始めから、俺は一人

ヒップホップコミュニティにまったく馴染めていない自分。

吸ってるのは大麻じゃなくて合法ハーブで、きめてるのはコカインじゃなくて抗うつ薬パキシル、売りさばくのはドラッグじゃなくてネットからダウンロードした音楽を CDR に焼いたやつだ。

住んでるのはゲットーじゃなくて実家だけど、親とは口も聞かない。

銃は持ってないけど、もしおれがアメリカ人だったらに調子乗ってプロレス技かけてくる体育会系の男を全員撃ち殺してる。

シンセサイザーやチキチキしたドラムを強調した大げさなくらい暗くて荒々しいサウンドに載せて、やる気なさそうに「死ね」だの「殺す」だの言ってる "No More Void 4 Lonely” はいまのぼくにとって最高のヒーリング・ミュージックだ。

自分に近くて自分よりみすぼらしい連中が、自分の代わりに表現してくれてる。癒される〜。癒される〜。

"No More Void 4 Lonely” は
No More Void 4 Lonely [Snippet] | soakubeats
から試聴できます。

WENOD RECORDS とかから買えます。
WENOD RECORDS : onnen - No More Void 4 Lonely [CD] 粗悪興業 (2014)

ちなみに onnen はすでに他界してます。

死にたい死にたい言ってるやつは死なないなんてのは迷信で、死にたい死にたい言ってるやつは死にたい死にたい言ってないやつより死にやすい。

たぶん現実はひどくつまらないものなのだ(何度指摘されても、つい忘れてしまうのだが)。真実は凡庸すぎて遠く、想像力が追いつかないくらい凡庸な場所にあるのだ。

柳下毅一郎

みなさまご自愛ください。

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