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廿TT

譬如水怙牛過窓櫺 頭角四蹄都過了 因甚麼尾巴過不得

拡散方程式の手短な導出

微分方程式

数理モデルとはなにか

自然科学の統計学 (基礎統計学)

自然科学の統計学 (基礎統計学)

適切な近似モデルを選ぶ上でもう一つ特記すべきことは,モデルの適合の良さはデータとの距離で測ってはならず,あくまで隠れた真の構造との距離を測るようにすべきことである。うっかりすると手元のデータによくあてはまるモデルを良いモデルと考えがちだが,あくまで背後の母集団をよく記述できるのが良いモデルなのである。


東京大学教養学部統計学教室 編 『自然科学の統計学 基礎統計学III』東京大学出版会 p.65

「『モデル化』ってなんですか?」と聞かれて, つい「数式で表すこと」と言ってしまうことがある.

しかし本当は数式で表すこと自体に意味はなく, 現象の本質を, 数式を含むいろいろな言葉で適切に近似したものがモデルである.

「本質」ってなんだ? と言われると「場合による」としか言いようがない.
でも, そうなんだ.

そして「本質」に正しく近づくために微分方程式は非常に有益なツールである.

数理モデル - Wikipedia

拡散現象の例

材料における拡散―格子上のランダム・ウォーク (材料学シリーズ)

材料における拡散―格子上のランダム・ウォーク (材料学シリーズ)

コップの水にたらした1滴のインクは, 水をかきまぜなくてもいつしか広がって, 全体を淡く色づける. このことは, 液体においては巨視的な流れがなくても, 分子の移動―拡散が起こっており, 互いに混り合うことを示している.原子が整然と配列している個体では, 気体や液体に比べると原子は動きにくいが, やはり拡散は起こっており, 再結晶, 析出, 酸化など, 材料中で生じるさまざまなプロセスを律速している.


—小岩 昌宏, 中嶋 英雄 著 『材料における拡散―格子上のランダム・ウォーク (材料学シリーズ)』 内田老鶴圃 p.1

  • 拡散現象の例
    • コーヒーにミルクをそっと注いだ場合, かき混ぜなくても(=巨視的な流れがなくても)コーヒーとミルクは徐々に混じりあう
    • 風のない部屋でも(=巨視的な流れがなくても)たばこの煙はゆっくりと広がる

拡散方程式の手短な導出

単に拡散方程式と言った場合, 一次元の拡散方程式を指すことが多い.

一次元の拡散方程式は,
 \displaystyle \frac{\partial}{\partial t} u(x,t) = a \frac{\partial ^2}{\partial x^2} u(x,t) \tag{1}

ここで,

  • u: 濃度
  • x: 位置
  • t: 時間
  • a: 拡散係数と呼ばれる定数 (a > 0)

である.

この式を読むためにはひとまず, 「濃度が時々刻々と変化していく様子を記述している方程式だ」というイメージを持てばよい.

f:id:abrahamcow:20141014120528p:plain

左辺は位置 x における微小時間( \Delta t とする)での濃度の変化量である.

 \displaystyle \frac{\partial}{\partial t}  \approx \frac{u(t + \Delta t) - u(t) }{\Delta t}

ところで, フィックの法則(1855)より, 溶質原子の流れは濃度勾配に比例する.
すなわち溶質(溶けているモノ)は濃度の高い方から低い方に流れる. その流れ方は濃度の傾きに比例する.
比例定数を a とすると,
\displaystyle J = - a \frac{\partial}{\partial x} u(x,t) \tag{2}
ここで J は溶質原子の流束(単位時間あたりの単位面積を通過する粒子数).

式変形して  a = - J /\left\{ \frac{\partial}{\partial x} u(x,t) \right\} とできれば拡散係数 a が求まるが, しかし J を直接測定することはできない.
測定できるのは, ある時間ごとの濃度分布だけ.

そこで,

 \{J(x) – J(x+\Delta x)\} \Delta t = \{ u(t+ \Delta t) –u(t)\} \Delta x
(微小時間 \Delta t の間に区間  [x, x+\Delta x] の領域に流入する単位面積当たりの溶質の量)=(その間の濃度の増加分)

より,
 \displaystyle - \frac{\partial}{\partial x} J = \frac{\partial}{\partial t} u(x,t)

J に (2) 式を代入し,
 \displaystyle \frac{\partial}{\partial t} u(x,t) 
= \frac{\partial}{\partial x} \left\{ a \frac{\partial}{\partial x} u(x,t) \right\}.

(1) 式の拡散方程式が得られた.

その他参考文献(本文中に言及のないもの)

拡散方程式 - Wikipedia
フィックの法則 - Wikipedia
Scilabによる数値計算の手引き

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関連エントリ


一次元の拡散方程式の解 - 廿TT